最新レポート:急成長するインドの旅行・観光産業 【前編】

インド人の最新旅行トレンドとは?

急速な経済成長が続くインド。昨年からは経済停滞が続くものの、それでも2019年度の経済成長率は5%と、日本とは比べものにならないペースで需要拡大が続いている。 今回は、その急速な経済発展とともに目まぐるしく変化するインドの観光・旅行産業の現状を取り上げる。

はじめに

13億人の巨大市場を抱えるインドでは、様々な産業においてその潜在需要が期待されている。これは、旅行・観光産業においても例外ではない。

在インド大使館によると、世帯可処分所得が5,000ドル以上35,000ドル未満(約54万円以上380万円未満)の中所得層と呼ばれる人たちが、2000年には全体の約4%だった。これが2030年には50%以上になると予想されている。今からあと10年で、国民の半分以上が中所得層になるという見立てだ。この数字は、今後更に、国内外の旅行を楽しめる層が増えることを示しているとも言えよう。

本連載記事では【前編】【中編】【後編】に分け、インド旅行・観光産業の概要をご紹介した後、昨今のインドにおける旅行トレンドを取り上げる。中編ではインド人観光客から見た日本、そしてインド人旅行者を日本へ誘致するための方法を考察する。そして後編では、世界の流れを大きく変えた新型コロナの流行で、今後の旅行業界と旅行トレンドがどう変わるのかを取り上げる。

インド旅行・観光産業の概要

世界経済フォーラムが発行した2019年度の「旅行・観光競争力レポート」によると、インドの観光競争力は世界ランキングで34位だった。

インド商工省が設立した財団India Brand Equity Foundation(IBEF)によると、インドの旅行・観光産業によるGDPへの貢献額は、2017年の2340億3,000万米ドル(約25兆3734億円)から2028年には4922億1000万米ドル(約53兆3652億円)の110%増になると予想されている。

WTTC(World Travel & Tourism Councilの略称、世界旅行ツーリズム協議会)によると、2018年の旅行・観光産業のGDPに対する貢献度で、インドは185か国中3位にランクインした。 また、2019年1月から7月までの外国為替収益(FEE)は、167億5700万米ドル(約1兆8168億円)だった。

インドのインバウンド観光市場

外国人観光客のインドへの流入数は、2017年に述べ1,000万人を超え、前年比で14%の増加を記録した。

ユニークな点は、医療目的の外国人観光客の流入数が、2016年の42万7014人から2017年の49万5056人に増加しているということだ。 2019年1月から7月にかけては、 インターネットでビザ申請から取得まで可能なe-Tourist Visaを利用してインドに入国した観光客が153万4293人に上り、この利用者数は前年同期比で21%も増加している。

また、2019年1月から7月にかけての外国人観光客の流入数は60万8,400人で、前年同期比2.1%増加した。2019年7月のFEEは、1,819億1000万ルピー(約26億6,000万米ドル、約2884億円)で、2018年7月から2019年同月までに7.2%増加している。

こういった市場の拡大を受けて、2017-18年には、インドの旅行・観光産業では8,110万人が雇用されており、これはインド国内の総雇用の12.38%に当たるという。

インド政府によるインバウンドマーケティング戦略

インド政府は、2020年までに世界の国際観光客の1%がインドを訪問するように、各種イニシアチブなどを通して取り組んでいる。2025年までには2%へと同シェアを拡大する方針だ。

インド政府によるブランディングおよびマーケティング活動は、インドの旅行・観光産業の成長に焦点を当てており、「Incredible India!」や「Athiti Devo Bhava」などがそれに当たる。

医療を目的とした旅行者が多いインド特有の施策として、国内の医療観光を促進するために、医療ビザまたはMビザという新しいカテゴリーのビザをリリースした。

また2018年9月には、インド政府は外国人旅行者のインド観光を支援するため、インド旅行における主要な観光地を紹介するモバイルアプリ「Incredible India Mobile App」を発表した。

インド観光産業への投資奨励策

インド政府は、旅行・観光産業への投資も後押ししている。

インド政府は、ホテルおよび観光産業で100%の海外直接投資(FDI)を認めている。また、ユネスコ世界遺産に登録されている2つ星、3つ星、4つ星のホテル(デリーとムンバイを除く)には、5年間の免税期間が設けられている。

インドのホテルおよび観光部門が受け取ったFDIの総額は、2000年4月から2019年3月までに123億5000万米ドル(約1兆3390億円)に達する見込みだ。

また、観光省が新たに提供を開始したWebベースの公共サービス提供システム(PSDS)では、ホテルプロジェクトの承認を求める全ての申請者が、リアルタイムでオンライン上にて申請状況を確認できるようになっている 。

加えて、インド政府は2019-20年度の連邦予算において、シンガポールなどからの観光客への税金還付(TRT)スキームを導入した。観光客がインドでより多くのお金を使い、インドの観光を促進することを奨励している。
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