取締役の報酬に対するGST課税論争の行方はいかに。

インド新時代の礎を築く最新の税務戦略に学ぶ ①

取締役への報酬にかかるGST課税関係の論点

さて、本題に戻りましょう。GST(Goods and Service Tax : 物品サービス税)とは、いわゆる日本の消費税に当たりますが、インドで2017年に導入されたばかりの新しい税制であるため、まだ税法や規則に不明確な部分も多く、さらに、通達や判例などが十分に出揃っていないこともあり、その課税関係において今回のような不可解な判断が起こり得ます。

まず、大前提として2017年CGST法(the CGST Act, 2017)のSchedule IIIにおいて、被雇用主たる従業員が雇用主に対して提供する労働は、「サービスの提供(Supply of Service)」には当たらないと規定されており、つまり、基本的に給与はGSTの課税対象外、と理解できることになりますが、今回の論争を生んだ背景としては、GST法において取締役(Director)と従業員(Employee)を定義する明確な規定がないこと、また、取締役への報酬が「役務提供の対価」なのか「給料」なのかを区別する明確な規定がないことが挙げられます。

カルナタカ州当局が出した判断結果

上記ラジャスタン州の判断結果については、私個人的にも到底納得ができるものではなく、社内でもインド人勅許会計士と議論をして当社としての見解を出そうとしていたのですが、なんと翌月の2020年5月4日に、カルナタカ州のAARから今回の論争に対して一定の解を提供してくれる別のケースにおける判断結果が下されました(参照:Advance Ruling No. KAR ADRG 30/2020)。その内容とは、取締役への報酬のGST課税関係については、(1)企業との雇用契約に基づき勤務している取締役へ支払われる報酬については、常勤取締役(Whole-Time Director/ Executive Director)への「給与」として認識さえるべきであり、従業員の資格を有する者として上記2017年CGST法 Schedule IIIの大前提が適用される、つまり、GSTは非課税とされるべきである、というものです。一方で(2)取締役として選任されているものの、企業において従業員と同様に勤務をしている実態がない非常勤取締役/非業務執行取締役(Non-Executive Director)が、何らかの役務提供をしたことにより支払われたとみなされる報酬については、2017年6月28日付の通達であるNo.6 of Notification No.13/2017により定義された「役務提供」の対価に該当し、冒頭でご説明したリバースチャージによるGST課税対象となる、という判断がなされました。
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