最新レポート:急成長するインドの旅行・観光産業 【後編】

コロナによる打撃とコロナ後のニューノーマル

コロナ後の旅行トレンド:何よりも国内旅行から

このように、コロナの流行と2ヶ月に及ぶロックダウンがインドの観光業界にもたらした影響は甚大だ。旅行需要がなくなっただけでなく、旅行をする人々の懐事情が苦しくなったことによる市場の長期間にわたる縮小が懸念されている。

しかし、底をついた後のリバウンドは必ず来る。インド観光省は、コロナ収束後の 「ロックダウン疲れ」を取るための安全な国内旅行を早くも呼びかけている。

5月27日にインド工業連盟(CII)がまとめた報告書によると、調査対象者の3分の2が「ロックダウン解除から3ヶ月以内に旅行する」と回答している。そのうち70%以上が国内旅行を好むと回答しており、海外旅行を好むと回答したのは1.4%にとどまった。

国内旅行の奨励は、インド政府が掲げるメイク・イン・インディアやVocal for Localのスローガンとも呼応する。インド観光省はロックダウン中にDekho Apna Desh(Look at your own countryの意味)イニシアチブを打ち出し、国内の観光地を動画で紹介している。

それでは、コロナ収束後のインドではどのようなスタイルの国内旅行が主流になるのだろうか。ここでは、いくつかのキーワードとともに業界関係者が発表している考察をまとめた。

①ステイケーション:ドライブで行く近場の旅行

コロナショックを経験した今、衛生面と健康管理が旅行する人々にとって最優先課題となった。公共の交通機関や密閉された飛行機での移動、混雑・密集する観光地などは避ける傾向が強まる。

逆に盛り上がりを見せるのは、自家用車で移動できる近場でリゾート型施設に滞在し、多くのアクティビティを盛り込まずのんびり過ごす「疲れない」旅行だ。 懐事情も苦しくなった人が多いため、移動費用のかからない近場が中心となる。

社会的距離を意識せず楽しめる、自然公園や動物保護区、山や高原などが主な行き先として選ばれる。

ステイケーションという言葉はステイとバケーションを足した造語。リーマンショックによる不況時に欧米で生まれた概念だが、インドでホテルの営業が再開した今、テレビやホテル予約サイトなどで再びこのキーワードが取り上げられている。
 

②ウェルネス旅行・リトリート旅行

ヨガ

ヨガ

健康意識への高まりから、ゆっくり休養をとって体に良いことをするアクティビティがコロナ後の旅行の中心テーマになりそうだ。アーユルヴェーダ、ヨガ、瞑想などができる滞在施設に注目が集まる。

また、宿泊先の衛生管理対策や旅行中の健康管理をフォローする付随サービスも新たに生まれるだろう。

プララード・シン観光相はメディアの取材に対し、最近の傾向として、リトリート系アクティビティを企画する企業や病院が業務提携などの形で観光ビジネスに新規参入していると伝えた。具体例として、トーマス・クックと関連会社のSOTCが6月12日、インド最大手の病院チェーンであるアポロクリニックと業務提携を発表している。

反対に、ツアーオペレーターがウェルネスビジネスに参入している例もある。ケララ州に拠点を置くSpiceland Holidaysは、ヨガや瞑想などのアクティビティをインターネット上で行う「バーチャルリトリートツアー」を開始した。世界中から参加することができ、ゆくゆくはバーチャルの参加者が実際にこれらのアクティビティが行われた会場に足を運んでくれることを見込んでいるという。

③出張とプライベートを組み合わせたブレジャー旅行の流れは加速

在宅勤務が広く浸透したいま、ロックダウン解除後も未だオフィス復帰を急がない企業が多い中で、コーポレートの出張需要があるのかと疑いたくなるが、ロックダウンの反動でむしろ社員が集まって話し合いをするニーズは高まると業界関係者は見ている。SOTC TravelのDaniel Dsouza社長はETの取材に対し、数カ月以内にブレジャー旅行の流れは再び戻ってくると語っている。

ブレジャー旅行についてはすでに前編で取り上げた。健康意識の高まりとともに、睡眠不足でスケジュールをびっしり詰めた出張スタイルではなく、家族とのゆとりの時間も大切にするというワークライフバランスを考慮した旅行スタイルは勢いを増すだろうという見方が強い。

またブレジャー旅行とは別に、コロナ後に成長する新たな旅行トレンドの一つとして、企業のリトリート旅行をシン観光相は挙げている。
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