中小零細企業向け経済支援による日系企業への影響とは?

新型コロナウイルスの感染拡大が続いているインドでは、ロックダウンに起因した経済停滞に直面しており、景気後退が危ぶまれています。こうした背景から、2020年5月12日にインド政府は、約20兆ルピー(約28兆円)規模の経済対策を行うことを発表しました。その中でも、中小・零細企業(Micro, Small & Medium Enterprises、以下”MSME”という)への手厚い支援を盛り込んでおり、7月6日には「MSME緊急対応プログラム(MSME Emergency Response Program)」の原資となる7億5,000万米ドル(約810億円)もの融資を新たに世界銀行と締結しており、インドの経済成長と雇用創出の核となる中小・零細企業の支援に向けて積極的に動き出しています。今回の融資契約で、世界銀行からの総融資額は27億5,000万米ドル(約3,000億円)に達しました。
中小・零細企業向けの無担保融資
さて、中小・零細企業向けの経済支援としてまず特筆すべきは無担保融資です。一般的に、中小・零細企業は資金的余力が大きくないケースが多いことから、景気後退の局面においては厳しい資金繰りを迫られます。そこで、インド政府は売上高10億ルピー未満のMSMEに対して総額約3兆ルピー(約4.2兆円)もの無担保融資(12ヶ月間の額面返済モラトリアム期間付)を発表しています。但し、インド政府が全額保証を行うこの無担保融資は、支援対象として債務不履行に陥る危機に瀕する企業を想定しているため、2億5,000万ルピー未満の借入金がある企業に限定されています。また、新規の融資額についても2020年2月29日時点における借入金の残高に対して20%までと定められています。
MSMEの定義変更にともなう影響
上記に加えて、インド政府は支援対象を拡大するために、MSMEの定義変更を発表しています。そもそもMSMEの定義は、2006年に制定された中小零細企業開発法(MSME Development Act, 2006)において規定されており、製造業/サービス業ごとに、機械設備や工場への投資額により、中規模企業、小規模企業、零細企業の定義がそれぞれ定められていました。しかし、このコロナ禍においてより多くの企業が資金調達の支援を受けられるよう、MSMEの定義が下記の通り拡大されました。

