「CAROTAR, 2020 」 税関職員の権限強化と輸入者の原産地証明義務の厳格化

インド新時代の礎を築く最新の税務戦略に学ぶ ⑨

また、(2)税関職員の権限については大幅に強化されており、原産地証明書の内容に不備がある場合は特恵税率の適用否認が可能とされています。また、輸入者が情報を保持する5年間において原産品に関する情報開示請求が可能となり、10営業日以内の期限において輸入者が十分に必要情報を提供できなかった場合もしくは輸入品の原産性に疑いが残るような場合は、特恵税率での輸入を停止させ、輸出国側の当局へ検認要請が行われます。この検認要請においても輸出当局が十分な対応を所定期限内に行わなかった場合や、検認の結果、当該貨物が原産資格を有しないと判断された場合、同じ輸出者、生産者から輸入された同種貨物に対しても特恵税率の適用を否認することが可能となりました。

インド原産地手続は、自由貿易協定(FTA)協定国において一般的に用いられる第三者証明方式に基づいています。つまり、輸入者が輸出国側の当局が発行する原産地証明書を用いて原産品であることを証明する制度が運用されています。これまでの手続きにおいては第三者証明方式において原産地証明書の提出を確認するのみ(G2Gモデル)と限定的でしたが、今回の関税規則の施行により、厳格な手続きが税関職員と輸入者へ要求されることとなります(B2Gモデルへのシフト)。
今回新たに関税規則が施行された背景には、輸入者の原産品の偽装による自由貿易協定の不当な利用があるとされており、特恵関税を適用した輸入品の不正な価格競争力が、インド政府の「Make in India」政策と製造業の成長促進を阻害すると問題視されています。特にインドではASEANとの貿易において、2010年のFTA締結以降、貿易赤字が続いており、その要因には中国が原産品とされる製品の迂回輸入にあると見られています。米中貿易摩擦においても、米国のFTA協定国であるベトナムを経由する形で、原産地が偽装された中国製品が迂回輸入される問題がありますが、インドでも同様の問題が国内事業者から指摘されており、国内産業への打撃が懸念されていました。

日印CEPA(日本インド包括的経済連携協定)や各国とのFTAに基づく特恵税率を適用する場合において、今回の関税規則の施行は、インド国内で輸入取引を行う日系企業インド法人へも影響があり、当該輸入品の原産地手続における十分な情報収集と輸出者側とのより緊密な連携および情報共有が求められます。
 

【執筆者】

Global Japan AAP Consulting Private Limited
代表取締役 創業者
田中 啓介

南インドのチェンナイに本社を構える国際会計事務所。バンガロールおよびハイデラバードにも拠点を持ち、インドに進出する日系企業の市場調査や法人設立支援、会計税務、法務、労務、カンパニーセクレタリー等の各種コンプライアンスのアウトソーシング支援やアドバイスをご提供している。また、リモートワーク前提の経理体制構築支援やバーチャルCFOとしてのインド子会社管理に強みを持ち、日系企業のインド事業の管理基盤を強固にします。創業者である田中は2012年からチェンナイに移住しており、これまで100社超の日系企業のインド進出を支援。

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