第1回:新型コロナ後の社会とインド企業への出資・買収について

(2)新型コロナで分断されたサプライチェーン、中国からインドシフトは起きるべきか

  • 2020年5月22日に経済産業省は、「新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、我が国サプライチェーンの脆弱性が顕在化したことから、生産拠点の集中度が高い製品・部素材、または国民が健康な生活を営む上で重要な製品・部素材に関し、その円滑な供給を確保するため、国内で生産拠点等の整備を行う企業に対して補助を行う。」として「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の公募を始めた。先行審査には、90件約996億円の応募があり、57件約574億円が採択された。二次募集の期限である7月22日までにはなんと1,670件約1兆7,640億円もの応募があり、結果146社約2,478億円が採択されている(2020年11月)。
     
  • 当該施策が公表された5月当時、筆者のもとに複数のインド企業経営者、インド専門家(投資銀行、会計事務所他)から「当該予算を用いて中国からインドに製造拠点を移す動きが活発化するはずなので是非連携して日本企業向けにインド進出プランに関して営業しよう」という話があった。そのたびに「またか…」と少々うんざりしながら、「(そもそも当該予算は日本国内への生産拠点等の整備が目的であり)また、中国からの生産拠点シフトは進むかもしれないが、そのシフト先は日本国内や、タイやベトナム等比較的日本の製造業にとって馴染みの深い国になるはずで敢えてインド、という動きにはならないと思う。」と回答していた。
     
  • これまでも米中貿易摩擦の高まりに伴い中国一極集中のリスクが取りざたされており、2019年11月-12月にJETROが実施し、2020年3月に結果を発表した海外事業展開に関するアンケート調査においても、7割弱の企業が中国からの生産拠点移管を示唆している。また、その移管先として挙げられている上位3カ国はベトナム・タイ・日本で、三か国合わせて約46%となっている。新型コロナがもたらしたサプライチェーンの分断は、この傾向を加速させる事にはなるだろうし、当該予算措置が後押しするだろう。但し、「一足飛びに」インドに生産拠点を移そう、という動きとはなり得ないだろうという見解を伝えた。インドの専門家からは「いやそんなはずはない」と食い下がる反応も、「そんなものか」とがっかりする反応等様々であった。
     
  • 納得してくれたか、とほっと胸をなでおろした他方、冷静に考えると、今回のような、分断に伴い顕現化したサプライチェーンの脆弱性を補強する(マイナスをゼロに戻す)為には、中国一極集中から日本国内や比較的知見のあるタイやベトナムにシフトしていく事が有効な施策と言える訳だが、この機会をとらまえてサプライチェーンの整備に一定金額の投資をする場合、インドに生産拠点持つことに対して(思い切って)投資をする事もどうして非合理とは言えないのではないか。そんな風に思うようになった。

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