第1回:新型コロナ後の社会とインド企業への出資・買収について

(3)インドへの進出・再活性化を真剣に検討するタイミング?

  • 数年おきに湧き上がる、インドへの生産拠点シフトというお話は、「巨大な潜在市場へのアクセス獲得(インドで売るためにはインドで作らねば)」「豊富で安価な労働力の獲得」「アフリカ・中東市場への橋頭保」といった目的で語られる事が多いが、これまで、「チャイナプラスワン実現の後に検討」という形で優先順位を下げて議論される事が多かった。今回の新型コロナは、様々な意味で「やらねば」と思っていたにも関わらず後回しになっていたあらゆる企業行動を変容させた。それも、新型コロナによって全く新たな論点が出てきたという訳では無く、これまでも既に議論があった論点だが、様々の理由やしがらみで実現していなかった事柄が一足飛びに「実現を迫られた」という事では無いか。「リモートワーク」然り、「働き改革」然り、「中国一極集中からの脱却」然り。同じ文脈の中で新型コロナ後の成長戦略として今一度真剣に「インド市場への進出(既進出企業においては「再活性化」)」を検討するのも十二分にあり得る話だと考えている。

(4)インドからの資金提供要請をTake Chanceする:本連載の狙い

  • 新型コロナの影響から、インド企業は当面厳しい状況に置かれそうだ。このような状況下、インドを代表する財閥であるReliance Industriesが、配下のモバイル事業や、リテール事業をテコに海外から巨額の資金を調達した事が耳目を集めた。コロナ禍においてもアメリカの投資家はインド11億人の人口へのアクセスを可能ならしめるモバイル事業・リテール事業に対する旺盛な投資意欲を実行に移しており、これまでも何とかしてインド市場でのプレゼンス拡大を模索してきた米国テクノロジー企業の積極的な動きは注目に値する。

  • インドの投資銀行からは連日、「投資家としての日本企業」へのアクセスを求めて照会が飛び込んでくる。また、インド企業と共同で合弁会社を設立している日本企業には「資金支援要請」が多く来ていると聞く。「コロナだから検討しない」のではなく、「コロナだからこそ」、正しい対象会社を選び、正しい交渉を経て、正しい条件で投資を実施し、取り込んでいく事が必要になって来る。
  • 他方、インド企業との提携や、インド企業の買収を前に逡巡する日本企業経営者・幹部は少なくない。本連載では①「なぜ」そのような逡巡を覚えるのかを文化的背景から分析し、その解決策(マインドセットの持ちよう)を提言し、また、②より円滑に交渉を進めるための「インドM&A実行、実務上の留意点とコツ」を纏める事でその逡巡を乗り越える「武器」をご提供したいと考えている。

執筆者



岡田 知也

株式会社マナスコーポレートパートナーズ(日本とインドのM&Aにフォーカスしたアドバイザリー会社)を2020年4月設立、代表取締役に就任。前職GCA(独立系M&Aアドバイザリー会社)時代、2009年9月から3年半、 GCAのインド事業立ち上げの為にムンバイに駐在。帰任以降も一貫して、足掛け10年日本企業によるインド企業への出資・買収に関するアドバイザリー業務に従事し、多数の日・印案件の成約に携わる。
「インド市場を斬る」記事一覧へ

関連記事