第2回:上手く行っているインドM&Aから学ぶ!

(1)日本とインドのM&Aの歴史を振り返る:「2008年・2014年問題」

  • 「インド企業の買収」、と聞くと逡巡する企業経営者・幹部は少なくない。何とはなしに「交渉で上手くやられてしまいそう」「騙されそう」「買収して上手く経営できるかどうかわからない」という反応によく接する
     
  • 少し歴史を振り返る。日本とインドのM&Aにおいて2008年と2014年は特に重要な年である。2008年は、第一三共株式会社(以下「第一三共」)によるランバクシー・ラボラトリーズ(以下「ランバクシー」)の買収と、株式会社NTTドコモ(以下「ドコモ」)によるタタ・テレサービシーズ(以下「TTSL」)への出資という大型案件2件が公表された年。2014年は両投資案件が「終焉」を迎えた年である。



     
  • 2008年6月、第一三共はインドの製薬会社大手ランバクシーの買収を公表。買収金額4,900億円という巨額案件という事で耳目を集めた。ところがその公表後3か月後にアメリカ食品医薬品局がランバクシーの2工場からの禁輸措置を取る旨が公表されるという事態が起きた。その後買収手続きは完了したものの今度は別の工場での安全性試験データの一部改竄が判明するという事件もあり、ランバクシーの株価が下落。第一三共はのれんを一時償却するとして3,540億円もの特別損失を計上した。
    最終的には2014年にサン・ファーマというインドの製薬大手とランバクシーが合併し(サン・ファーマの時価総額が大きい為)第一三共は合併新会社の少数株主となる形で実質的にランバクシーの経営から距離をおく事となった(その後、合併新会社株式は3,800億円で売却した)。
     
  • ドコモは、2008年11月にTTSLに対して2,600億円を投じて議決権の26%を取得した。その後、「1秒ごとの課金システム」という当時では先進的な仕組みを導入しインドにおける純増シェアNo.1を獲得する等、躍進を見せた。ところが2014年4月に、ドコモは株主間契約に規定されている、「TTSLが所定の業績指標を達成できなかった場合に行使可能な売却するためのオプション」を行使する=撤退を公表した。
     
  • さらに両案件において、それぞれ株主との争いに関連して国際仲裁に発展し(第一三共・ドコモ側に有利な判断となった)、当該仲裁判断に相手方が従わず、インド国内での強制執行判決を経てようやく着地したという流れも共通している。
     
  • 華々しい巨額投資案件の公表から撤退発表というギャップと、国際仲裁・訴訟、というおどろおどろしさが心理的に影を落としている事は間違いないだろう。
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