第2回:上手く行っているインドM&Aから学ぶ!

(2)日本とインドのM&A、好事例は無いのか?

  • デューディリジェンスが不十分だったのではないか、契約書上での手当てが不十分だったのではないか?といった、不幸にして撤退に繋がった投資案件の荒探しよりは、上手く事業展開に繋がっている事案を見ていく事での学びも重要だと考える。
  • インドのM&Aで上手く行っている事例はあるのか?と聞かれると私はこの特集を読むことをお勧めしている。2015年に組まれた経済誌週刊ダイヤモンドに「インド 「厄介な超大国」で突破口を開く」という特集だ(電子書籍化されており、Amazon Kindle等で入手可能(https://www.diamond.co.jp/digital/478066010000.html))。取り上げられている企業は4社。東芝機械(現芝浦機械株式会社)、コクヨ株式会社、日本生命保険相互会社、パナソニック株式会社である。いずれの企業も2010年頃にインドでM&Aを実行している。M&A実行により各社が得たアドバンテージについてインタビューしているのだが、興味深いのは当該ストーリーが特集から5年、買収から10年ほど経過した2021年の現在においても引き続き有効に生きているという点だ。成功事例ともてはやされたM&A案件がその後大失敗という評価を受ける事もよくある中、4社ともM&Aを端緒としてインドでの事業展開を継続して拡大している点がこの特集の真価だと考える。
     
  • 芝浦機械
    2015年当時、「ゼロから自前で工場を立ち上げた中国では、品質が安定するまでに約10年かかった。それを考えれば、ものすごいアドバンテージを得たことになる」とM&Aプロジェクトチームのリーダーであった坂元様(現在は芝浦機械の取締役社長となられている)は当該特集のインタビューで語っている。その後も芝浦機械はインドでの生産能力を複数回拡大し(例えば、2017年インドの生産能力を1.5倍にするとしている)、現在ではインドは芝浦機械の中核生産拠点の一つとなっている。またインド国内市場での販売強化に加えて、インドからの輸出も拡大している。米中貿易摩擦に伴う制裁関税から、「中国で製造して米国に輸出する」、というこれまでの事業が厳しくなる事態にインドでの生産能力拡大が実に有効な対応策となっている。まさしく現在言われるような「中国へのサプライチェーン依存低減」を体現している好事例と言えよう。

 

  • コクヨ
    「インド全土で 30 万店を超える小売店網が手に入った。日本と違って流通は組織化されていないが、受発注に関わる者がサムスンの端末で情報を共有できる新システムの開発に着手している。これで、商流の改革や商品の共同開発が軌道に乗れば、すごいことになる」というのが2015年当時、コクヨの 土井様が特集インタビューに答えた内容だ(土井様は現在でも買収したコクヨ・カムリンの取締役としてインドでご活躍中)。コクヨもその後、インドで新工場を設立し、インド国内市場での展開に加えてインドからの輸出を増加させている。インド国内全土に広がる販売網を一気に獲得する事の重要性(そしてそれはM&Aで無いと実行できない)は、日本国内で圧倒的な販売網を築いて文具業界のガリバーの地位を獲得したコクヨだからこそ強く認識できたことではないかと考える。
     
  • その他、当該特集記事では、外為規制規制緩和のたびに巨額の追加投資をして、議決権割合を引き上げている日本生命(日本と同様、女性を販売員として活用し、事業展開拡大に成功しているという好事例)。や、パナソニック(2007年にインド企業を買収、インド国内に加えて中東・アフリカをインドから攻めるという戦略を立てた。インドで買収した企業を中核会社にその後も複数インド企業買収を実施し、日本の本社の取締役にインド人を抜擢する等、先進的な取り組みを行っている)が取り上げられている。
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