第3回:インドM&Aに逡巡しない為に!
インドM&Aアドバイザーによる徹底解説 Passage to India ~インドM&Aを考える~
1.グローバルでは極端な日本のコミュニケーションスタイル

(http://www.eijipress.co.jp/book/book.php?epcode=2208)
「カルチャーマップ」という言葉を聞いたことがあるだろうか?エリン・マイヤー氏の著作「異文化理解力 相手と自分の真意が分かるビジネスパーソン必須の教養」(2015年)英治出版で詳しく解説されているのだが、端的に言えば異なる文化においてはそれぞれに癖があり、それをお互い理解しておくとビジネスがより円滑に進む、という事で、8つのマネジメント領域について各国の位置づけを可視化したものである。当該書籍において日本の文化が頻繁に取り上げられる。例えば「空気を読む:原文では”read the air”」という言葉の意味や、「飲みニケーション」という、タスクベースとも信頼ベースとも取れる日本特有の関係性の構築の仕方について等。どうやら日本の文化はこのスケールによれば相当に「独特」と言えそうだ(是非書籍に目を通して頂きたいのだが、各スケールにおいて日本の文化は極端な場所にプロットされている。例えば下記は、「コミュニケーションの取り方」に関するカルチャーマップ。日本は最もハイコンテクストなコミュニケーションスタイルをとるとされている)。
2.日本とインドのM&A交渉スタイルを「カルチャーマッピング」してみる

エリン・マイヤーによるとインドは比較的「ハイコンテクスト文化(コミュニケーションにおいて、言葉で何を言ったかよりも価値観、感覚といったコンテクスト(文脈、背景)に大きく依存する文化)」に位置付けられているが、上記の小職分析では「比較的ローコンテクスト」としている。インドは一つの国の中に多言語・多文化があり、同じインド人同士で会話をする際に母語同士だと通じないケースがままあるため、特にビジネスでは英語でコミュニケーションを取る事が多い。ローコンテク文化の言語である英語を使う事で、ビジネスの領域においてインドは「比較的ローコンテクスト」にふるまえる習性がある、と考えている為だ。
日本の交渉スタイルは「超」ハイコンテクスト(言わなくても分かるでしょう。明白な事を言葉に出すのは「野暮」)、インドでのM&A交渉に臨むチームが東京本社にいる経営陣と「合意形成をしながら」交渉の結果を積み上げていく(「今日はここまで合意できました。明日の交渉ではこの点とこの点を協議します。今、山の7合目なのでもう一息です」」。相手方も同様の思考であれば、合意事項の積み上げ=信頼関係の構築、と捉える事ができる。
他方のインド企業側は、基本的にはトップダウンの意思決定で議論に躊躇はしない。自分にとっての当たり前が相手にとっての当たり前かが分からないので、念のため確認する。”確認までに” 言葉に出して議論する。なお余談だが、当たり前には二つの意味がある。両者間で合意している事が明らかである「当たり前」と、「相手が呑まなくて「当たり前」、つまり ”ダメもとの交渉”だ。