インドのIT企業は日本でどのぐらい健闘しているのか
(この記事は、日本で働くことを目指すインド人のための就職エージェントEIJ Careerのウェブサイトに掲載された記事を和訳したものです。)
日本のITサービス産業の現状は、海外ではあまり知られていません。それは、日本国内の企業がホームグラウンドでのビジネスを謳歌しており、海外企業がプレゼンスを発揮できる場所が非常に限られているからでしょう。インドのIT企業は、欧米市場で知名度が高くグローバルIT企業のトップにランクされている大手企業であっても、日本ではあまり知られていないのが現状です。

これは日本のITサービス企業のランキングです。(データは2018年時点、IDCより)。このリストから、外資系企業はIBMのみで、それ以外の企業は国内のIT大手企業であることがわかります。
インド系IT企業のオフショアビジネスのプレゼンスを見てみましょう。NASSCOMによると、2017年のインドのソフトウェア輸出額は合計990億米ドルで、全体の62%と17%がそれぞれ米国と英国の市場向けであるのに対し、日本向けは1%も満たしていません (売上高10億ドル未満)。
インドの IT 企業が日本市場に力を入れていないわけではありません。実際、彼らが日本市場に参入したのはずっと早く、IT業界のあちこちでY2K問題が騒がれていた1990年代後半から、大手企業のほとんどが日本にオフィスを設立していました。データから明らかなのは、この世界第3位のIT市場でインド企業は、これまでうまくいっていないということです。
ここでは、インドのIT大手企業5社の日本進出の概観を紹介します。日本で上場している企業がないため(インフォシスに関しては、日本法人ではなく海外支店という位置づけ)、一般公開データから得られる情報は限られています。
インドの大手企業の中で、三菱商事(株式34%)と提携しているTCSジャパンだけが存在感を示しているようです。TCSは2015年、日本の顧客に特化したサービスを提供するため、プネにJDC(ジャパン・デリバリーセンター)を設立しました。そして、デリバリーセンターと並行して、従業員に日本語と日本のビジネス文化を教える日本語研修施設「光アカデミー」も設立しました。
日本のITサービス産業の現状は、海外ではあまり知られていません。それは、日本国内の企業がホームグラウンドでのビジネスを謳歌しており、海外企業がプレゼンスを発揮できる場所が非常に限られているからでしょう。インドのIT企業は、欧米市場で知名度が高くグローバルIT企業のトップにランクされている大手企業であっても、日本ではあまり知られていないのが現状です。

これは日本のITサービス企業のランキングです。(データは2018年時点、IDCより)。このリストから、外資系企業はIBMのみで、それ以外の企業は国内のIT大手企業であることがわかります。
順位 | 企業 | 2018年度の売上高(10億円) |
1 | 富士通 | 1,199 |
2 | 日立製作所 | 913 |
3 | NTTデータ | 889 |
4 | NEC | 880 |
5 | IBM | 711 |
6 | TIS | 304 |
7 | NRI | 260 |
インド系IT企業のオフショアビジネスのプレゼンスを見てみましょう。NASSCOMによると、2017年のインドのソフトウェア輸出額は合計990億米ドルで、全体の62%と17%がそれぞれ米国と英国の市場向けであるのに対し、日本向けは1%も満たしていません (売上高10億ドル未満)。
インドの IT 企業が日本市場に力を入れていないわけではありません。実際、彼らが日本市場に参入したのはずっと早く、IT業界のあちこちでY2K問題が騒がれていた1990年代後半から、大手企業のほとんどが日本にオフィスを設立していました。データから明らかなのは、この世界第3位のIT市場でインド企業は、これまでうまくいっていないということです。
ここでは、インドのIT大手企業5社の日本進出の概観を紹介します。日本で上場している企業がないため(インフォシスに関しては、日本法人ではなく海外支店という位置づけ)、一般公開データから得られる情報は限られています。
企業 | TCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ) | HCL | インフォシス | ウィプロ | コグニザント |
日本での設立年 | 2004 | 1998 | 1997 | 1998 | 2008 |
従業員数 | 2,900 | 380 | 350 | 325 | 800 |
資本金(100万円) | 4,327 | 220 | NA | NA | 300 |
強み | Business 4.0 (AI、ビッグデータ分析、クラウド型ソリューション) | 組込み型アプリケーション | ビジネスアプリケーション | ハイテク企業向け製品エンジニアリングサービス(半導体、自動車設計) | 保険・医薬品分野のソリューション事業が80%を占める |
インドの大手企業の中で、三菱商事(株式34%)と提携しているTCSジャパンだけが存在感を示しているようです。TCSは2015年、日本の顧客に特化したサービスを提供するため、プネにJDC(ジャパン・デリバリーセンター)を設立しました。そして、デリバリーセンターと並行して、従業員に日本語と日本のビジネス文化を教える日本語研修施設「光アカデミー」も設立しました。
日本市場攻略の難しさ
なぜインドのIT企業は日本市場に参入できないのでしょうか?言語の問題とは別に、ビジネス文化の違いも大きな理由の一つであります。インドのビジネスのやり方は、ソフトウェア開発の方法論や商習慣の面で欧米のビジネスのやり方に適応し、うまく採用されているため、より「グローバル」スタンダードに近いものと考えられています。日本独特のビジネス慣行の例を挙げるとこのようなものがあります:典型的な日本の顧客組織の意思決定のスピードは、外国企業がびっくりするほど遅い。外資系ベンダーの目には、製品やサービスの成果物に対する品質の期待値が高すぎる傾向があり、その結果、納品スピードや従業員のワークライフバランスが犠牲になることが多い。
仮にインドの IT ベンダーのアウトプットの質が日本のベンダーよりも優れていたとしても、プロジェクトや案件を獲得できるかどうかは別の話です。日本人は長期的な関係を好み、「自分に合ったベンダーを何年もかけて育てる」という文化があるため、既存の日本のベンダーは長年にわたってクライアントとの強い絆を築いてきました。また、居酒屋でクライアントと一杯のビールを飲むような日本の伝統的なビジネスのお付き合いも、取引の成立に大きな影響を与えるだけでなく、取引を維持することにもつながっています。

以上のような理由から、インドのIT企業の多くは日本のクライアント案件を獲得することができず、富士通やNTTデータなどの国内大手IT企業からの下請けや、グローバルに契約を結んでいる多国籍企業の日本法人の案件に依存してしまう傾向にあります。
仮にインドの IT ベンダーのアウトプットの質が日本のベンダーよりも優れていたとしても、プロジェクトや案件を獲得できるかどうかは別の話です。日本人は長期的な関係を好み、「自分に合ったベンダーを何年もかけて育てる」という文化があるため、既存の日本のベンダーは長年にわたってクライアントとの強い絆を築いてきました。また、居酒屋でクライアントと一杯のビールを飲むような日本の伝統的なビジネスのお付き合いも、取引の成立に大きな影響を与えるだけでなく、取引を維持することにもつながっています。

以上のような理由から、インドのIT企業の多くは日本のクライアント案件を獲得することができず、富士通やNTTデータなどの国内大手IT企業からの下請けや、グローバルに契約を結んでいる多国籍企業の日本法人の案件に依存してしまう傾向にあります。
オフショアビジネスの概観
日本のIT企業では、オフショア開発を実践している企業も珍しくはないが、あまり一般的でもありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によると、日本のIT企業の約45%がオフショア開発を実践しているといいます。日本からのオフショア開発費は、国内市場のIT投資総額の1%に過ぎないのに対し、欧米の企業はソフトウェア開発費全体の10%程度を費やしています。
80%以上の企業が中国をオフショア開発先として選択していますが、その理由は、地理的に近いことと日本人バイリンガルエンジニアの豊富なリソースがあるからです。次いでインドとベトナムが続き、それぞれ約20%のシェアを占めています。欧米諸国と同様に、日本企業がITプロジェクトをアジア諸国にアウトソースする際には、常にコスト削減が主な原動力となっていました。
2016年、経済産業省が国別IT人材に関するレポートを発表しました。その調査によると、インドのITエンジニアは、日本やベトナムやタイなどの東南アジア諸国と比較して、ハイエンドプレイヤーの割合が高いことがわかりました。 インドにはスキルを持った人材が豊富に存在し、スキルレベルに応じたコストが妥当であるにもかかわらず、インドへのアウトソーシングという選択肢を検討している日本企業は非常に少ないのが現状です。日系企業がインドよりも東南アジア諸国を選ぶ理由は、日本語バイリンガルの人材が豊富にいることです。業界の専門家は以前から、日本企業はインドの巨大なITポテンシャルを活用できていないことを指摘しています。
80%以上の企業が中国をオフショア開発先として選択していますが、その理由は、地理的に近いことと日本人バイリンガルエンジニアの豊富なリソースがあるからです。次いでインドとベトナムが続き、それぞれ約20%のシェアを占めています。欧米諸国と同様に、日本企業がITプロジェクトをアジア諸国にアウトソースする際には、常にコスト削減が主な原動力となっていました。
2016年、経済産業省が国別IT人材に関するレポートを発表しました。その調査によると、インドのITエンジニアは、日本やベトナムやタイなどの東南アジア諸国と比較して、ハイエンドプレイヤーの割合が高いことがわかりました。 インドにはスキルを持った人材が豊富に存在し、スキルレベルに応じたコストが妥当であるにもかかわらず、インドへのアウトソーシングという選択肢を検討している日本企業は非常に少ないのが現状です。日系企業がインドよりも東南アジア諸国を選ぶ理由は、日本語バイリンガルの人材が豊富にいることです。業界の専門家は以前から、日本企業はインドの巨大なITポテンシャルを活用できていないことを指摘しています。