インドの観光・ホスピタリティ業界、リストラを開始



【ニューデリー】 インドの旅行・観光業界、そしてホスピタリティ業界の企業が従業員のリストラを始めた。これらの業界は、インド政府が打ち出した20兆ルピーの救済支援パッケージの対象にはまだ挙がっていない。事態の進展に詳しい業界関係者が述べた。

インド観光・ホスピタリティ協会連盟 (FAITH) とインド工業連盟(CII)が以前推定したデータによると、観光業のバリューチェーンが新型コロナウイルスの感染拡大によって影響を受けるであろう直接的・間接的な雇用喪失の合計は、3,800万人から5,000万人に上る。ここにはホテルやレストラン、航空会社、ツアーオペレーター、運送業者、その他の提携企業が含まれる。国内総生産 (GDP) と外貨収入に大きく貢献し、コロナ感染流行の影響を最も受けた業界の一つであるにもかかわらず、政府からの財政支援の対象から外れたことに、業界は衝撃と失望を表明している。

インド内務省指示に従い、ロックダウン(都市封鎖)の第4フェーズである今月末までは国際線と国内線の旅客運航は停止されたままである。しかし水曜日、Hardeep Singh Puri民間航空相はツイッターの投稿で、5月25日から国内旅客便の運航を運用制限付きで再開するとした。旅行サービス業者やその他の関連部門は、新たな社会的距離の規定、子供や高齢者と共に旅行することへの恐怖、海外旅行の低迷などから、少なくとも来年までは完全な回復を期待していない。

ホテルやその他のホスピタリティサービスは、法務省指示に基づき、この第4フェーズでは禁止されたままだ。ただし、住宅の提供や保健、公安目的の利用、政府関係者、医療従事者、観光客を含む立ち往生者への提供、そして隔離施設としての利用は例外的に認められている。  

4月の全インドでの客室稼働率は11%にまで低下、1部屋当たりの収入は87%も減少し、未だ事業再開の許可も下りていない状況にあるホテル業界は先行きが全く見えない闇に直面していると、南アジアのホスピタリティー・コンサルタント会社であるHVS Anarock社のMandeep Lamba社長は語る。

「事業の継続的な損失に加え、今後の見通しも暗いことから、企業は最後の切り札として、人件費の見直しやリストラを検討せざるを得なくなっている」と同氏は付け加えた。

事情に詳しい筋によると、旅行会社トーマス・クックと関連会社のSOTCでは350人近い従業員が解雇され、今後さらに増えるという。同社は、水曜日に行われたプレス報道までET紙の取材には回答しなかった。

海外旅行代理店大手のFCM Travel Solutionsでは200人以上の従業員を解雇し、残る従業員の15%を無給休暇にしたと言われる。

同社のRakshit Desai社長は解雇の事実を認めたが、具体的な数字を明かすことは控えた。同社は、ロックダウン以前には2,000人の従業員がいたと伝えた。

「少なくとも3ヶ月は収益ゼロが見込まれたため、経費削減が必要であった。従業員を抱えておけるだけの余裕がなかった。何ヶ月にもわたって収益ゼロの状態で耐えられる企業はそう多くはない。同じ状況に置かれていない同業他社があるとすれば、非常に驚くだろう」と同氏は付け加えている。

Yatra.comのDhruv Shringi CEOによると、同社が実施したコスト削減は人件費に限らないという。同氏は、リストラに関する質問には回答しなかった。

インド旅行会社協会 (IATO) のPronab Sarkar会長は、加盟旅行会社によるリストラが始まったと述べた。同協会には、インバウンド旅行を専門とする旅行会社1,700社以上が加盟する。

同会長によると、ホテルチェーンは実家から離れて勤務する従業員たちを退職させ、試用期間中の従業員をそのまま解雇し、その他の従業員は無給休暇にしているという。  

インドの某大手ホテルチェーンは、少なくとも従業員の20%を解雇する計画だと、内部関係者は打ち明けた。

事情に詳しい関係者によると、ハイアットはチェンナイにあるパーク・ハイアットが一時休業に入った後、その120名の従業員を解雇したという。同グループは、6月1日までに世界全体で1,300人の従業員を解雇すると発表している。同社はコメントを控えている。

EaseMyTripの創設者Nishant Pitti氏は、インドのオンライン旅行会社で働く約5万人の雇用のうち、約50%がなくなるだろうとコメントした。同社は、MICEとパッケージ旅行部門の従業員を解雇している。    

[参考元]
THE ECONOMIC TIMES
Tourism & hospitality industry begins layoffs
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